路傍の晶
インテリア雑貨 リヴィナ・ダイニン 涌井さん
「むかしから、ひとに喜んでもらうことが好きだったんです」建築士のご主人とともに店を営む涌井さんの笑顔が弾ける。
「ですからリフォームは楽しいですね。生活をワンランクアップさせる、そのお手伝いができる喜びを感じます。扱っている家具や雑貨にしても、使いやすさはもちろん、“使って楽しいもの”という観点で揃えています」
しかし、笑顔の裏側では心労も絶えない。「お客さんとの信頼関係が大事」と語るリフォームは、まず相手を理解することから始まる。セッションを重ね、趣味やこだわりを深く掘り下げていく。ときには会話が密接な話題にまで及ぶこともあろう。無論。予算にも十分配慮しなければならない。そうやって互いを知ったうえでデザインのアイデアを搾り出し、材質も希望に適するよう厳選する。おおよそ受注に対し機械的に作業をこなすだけであれば、これほど時間や労力を必要とはしないだろう。
親身なリフォームにオーダーは尽きない。江戸川区から住まいを移した利用者をはじめ、神奈川や埼玉からも依頼が届く。住宅や店舗、病院など案件はさまざまだ。その一つひとつにじっくりと時間をかけるため、休日はほとんどない。だが、それでもなお対話を大切にするのは、「相手を理解しなければいいものは造れない」という信念ゆえだろう。裏を返せば、その姿勢がクライアントからの信頼を生んでいる。
おなじ西葛西の清新町から駅前へ移って、早10年が経つ。地元の利用者を中心に評判は口コミで伝わり、客足は後を絶たない。
「まずはお店に足を運んでいただけたらうれしいですね」そう言って、涌井さんは笑みをこぼす。
「江戸川区は子ども連れの方が多いんです。遠出するのが難しければ、うちに来て、商品を手に取ったり話したりしながら、楽しんでいただければうれしい。スプーンひとつでもそれはインテリアの一部。いろいろ話すなかで、生活に携わるものすべてを提案していきたいですね。お客さんに、最後に笑ってもらうことを心がけています」
ライフスタイルの提案を今後さらに広げていきたいという。西葛西駅ちかくに佇む店は、店主の笑顔同様に明るく穏やかで、あったかい。
取材・文◎隈元大吾